時代を経ても生き続けるコンテンツを育てる 「情熱と原動力」

 

関 弘美(せき ひろみ)
拡大
関 弘美(せき ひろみ)

■プロフィール

2020年秋公開予定映画「魔女見習いをさがして」のプロデューサー。
「デジモンアドベンチャー」シリーズ、「おジャ魔女どれみ」シリーズのプロデューサーでもある。1985年入社。2008年テレビ企画部長、2012年より企画開発スーパーバイザーを経て、現在、営業企画本部所属プロデューサー。

【Q1】「デジモン」「どれみ」を立ち上げた当時の思いや大変だったことをお話しください。

1998年3月。入社当時からの「夢」だったオリジナル作品の企画は、朝日放送のプロデューサー(以降P)の強い後押しのおかげでした。前作「夢のクレヨン王国」を高く評価してくださり、「同じP・監督・脚本が組むのであればOK」と。「こんなチャンスは二度と来ないかもしれない」と、思い切りやりたかったことを実行しようと考え、「おジャ魔女どれみ」スタッフたちとの打ち合わせを始めました。
 ところが7月、フジテレビの新番組「デジモンアドベンチャー」担当の話があり、その役を拝命しました。モンスターの設定はあるものの、「お話はオリジナルで」ということに。当時は、1人のPが2本担当するのは当たり前。「もう1本男児向けのオリジナルが創れるなんてラッキー!!」と引き受けました。ただ、2作オリジナルとなると、脚本・美術・キャラの打ち合わせも、それまでとは次元が違うほど次々とこなす必要があり、睡眠時間もなくなるほどハードな毎日でしたが、アドレナリンが出ていて(笑)
全く苦にはなりませんでした。現在では有り得ない働き方ですが、当時は、女性Pが存在すること自体が有り得ない時代(笑)でしたから、「この波に乗ろう!」という「覚悟と気合」で働きました。
 この20年間にP・監督・製作スタッフはもちろんのこと、営業の現場で活躍する女性も増え、オリジナル作品も長期にわたり製作しているので、あのときの「覚悟」は無駄ではなかったと思います。

【Q2】「魔女見習いをさがして」の企画意図や特集見どころを教えてください。

数年前から、「どれみ」「デジモン」を見て育った若い人たちが入社し始め、「好きでした! 新作を!」と言われるようになりました。この間、かつての視聴者の動向を探るためのマーケティングを続け、20代~30代前半の若者の傾向を知り、「新たに伝えたいこと」が私の中にも芽生えてきました。
 かつての視聴者世代の特徴は、デジタルデバイスに慣れ親しみSNSも使いこなす一方、リーマンショックや震災、気候変動による災害の影響を子どもの立場でリアルに受けてきた世代です。その証拠に、奨学金で大学や専門学校を出て働く新入社員が、周囲の会社でも増えてきているように感じます。
 彼らは周囲への気配りや社会的弱者への優しさを持ち合わせる一方で、広がる格差から生じる閉塞感や自信が持てない弱さも持ち合わせています。周囲の反応を気にし過ぎ、ソツなく社会に適応し、親への感謝を忘れない。「期待を裏切らない良い子」たちです。もちろん、そのことが悪いのではなく、その分、妙に現実的で、本当にやりたいことを見失うことが問題なのです。
 今秋公開予定の「魔女見習いをさがして」では、「自分の可能性を信じてほしい」というメッセージを込めて、「観客の目線」でストーリーを組み立ててみました。「どれみ」の世界観を引き継ぎながら、新しい「大人のための魔法の物語」ができあがっていると思います。賛同してくれた旧作スタッフ、若いスタッフなくしては、完成できなかった作品をお楽しみください。

【Q3】プロデューサーとして大事にしていること、 若手プロデューサーに望むことはありますか?

100人いれば100通りのP論があると思います。
 私の場合は、「時代性」と「普遍性」を兼ね備えた群像劇が大好きで、プロデュースの語源に着目し、「前もって時代を考え」「前もって人材を育て」「前もってビジネス環境をつくる」Pになろうと働いてきました。クリエイターや営業現場に的確なアドバイスができるよう、「アニメ以外」の幅広いジャンルへの好奇心を持ち続けることが大事だと考えます。
「作品」は子供であり、40年後には孫になる。時代を経ても生き続けるコンテンツに育てることが大切です。自分のノウハウを、若い世代の目の前で実行し、共に働く彼らに経験してもらうのが一番だと思っています。「大切にしたい人材や作品性や哲学」を次世代につなぎ、バックアップしながらも、若いPには、誰の真似でもない、あなたなりの方法論を見つけて欲しいと思います。

ご紹介アニメ

デジモンアドベンチャー:

毎週日曜日 朝9:00~フジテレビほかにて放映中
拡大
毎週日曜日 朝9:00~フジテレビほかにて放映中

■ストーリー

1999年に放送されたテレビアニメ「デジモンアドベンチャー」をベースに、時代背景を現代に再構築した完全新作ストーリー。小学5年生の八神太一は、大規模ネット障害で停車できなくなった電車に乗る母と妹のヒカリを助けるために渋谷へと向かう。しかし、駅のホームに向かうその瞬間、太一は「デジタルワールド」へと飛ばされてしまう。

 

■スタッフ

原作:本郷 あきよし
シリーズディレクター:三塚 雅人
シリーズ構成:冨岡 淳広
キャラクターデザイン: 中鶴 勝祥、浅沼 昭弘

 

■キャスト

三瓶 由布子
坂本 千夏
野沢 雅子  他

映画「魔女見習いをさがして」

2020年秋 公開作品
拡大
2020年秋 公開作品

■ストーリー

仕事や進路に迷う、年齢も住んでいる場所も全く異なるソラ、ミレ、レイカの3人。子どもの頃に夢中になっていた「おジャ魔女どれみ」をきっかけに出会った彼女たちが、現実に悩みながらも共に夢を取り戻すドラマを描いた大人のための新たな「魔法」の物語。

 

■スタッフ

原作:東堂 いづみ  
監督:佐藤 順一、鎌谷 悠
脚本:栗山 緑
キャラクターデザイン・総作画監督:馬越 嘉彦

■キャスト

森川 葵
松井 玲奈
百田 夏菜子
石田 彰
三浦 翔平
キャスト
千葉 千恵巳
秋谷 智子
松岡 由貴
宍戸 留美
宮原 永海  他